私の人生が音を立てて崩れ始めたのは、管理会社から届いた一通の書面がきっかけでした。そこには、建物の老朽化に伴う解体と、全入居者への半年以内の退去要請が記されていました。普通の入居者であれば、新しい住まいを探す楽しみや引っ越しの準備に追われるのでしょうが、当時の私にとって、その通知は死刑宣告にも等しいものでした。なぜなら、私の住むマンションの一室は、天井近くまで不用品やゴミが積み上がった、いわゆるゴミ屋敷と化していたからです。始まりは数年前、仕事のストレスからセルフネグレクトに陥り、コンビニ弁当の殻や空き缶を捨てるという当たり前の行為ができなくなったことでした。最初は足元に少しゴミがある程度でしたが、気づけば床は見えなくなり、膝の高さを超え、ついには部屋の奥へ行くためにゴミの山を這い登らなければならない状態になっていました。マンションの退去には、必ず管理会社による立ち会い検査が伴います。この惨状を他人に見られる恐怖、そして高額な修繕費用を請求される不安で、私は夜も眠れない日々を過ごしました。窓は結露とカビで真っ黒になり、床のフローリングはゴミから漏れ出した液体で腐食しているのが容易に想像できました。しかし、退去の期限は刻一刻と迫ってきます。私は羞恥心を押し殺し、インターネットで見つけた専門の清掃業者に電話をかけました。やってきたスタッフの方々は、私の部屋を一目見ても嫌な顔一つせず、淡々と作業の段取りを説明してくれました。マンションの退去に向けた清掃は、単にゴミを捨てるだけでは終わりません。長年染み付いた悪臭の除去や、床や壁に染み込んだ汚れの特殊清掃、そして何よりも管理会社に納得してもらえるレベルまでの原状回復が必要です。作業当日、トラック数台分もの不用品が運び出されていく様子を、私はただ呆然と眺めていました。ゴミがなくなった後の部屋は驚くほど広く、そして無残でした。剥がれた壁紙や黒ずんだ床を見て、私は自分の人生をどれほど疎かにしていたかを痛感しました。しかし、清掃業者の技術は凄まじく、数日後には見違えるほど清潔な空間が戻ってきました。立ち会いの日、私は心臓が飛び出しそうなほど緊張していましたが、管理会社の担当者は「綺麗に使っていただきありがとうございます」と笑顔で言ってくれました。その瞬間、私はようやく長い悪夢から覚めたような気がしました。マンションを退去し、新しい住まいに移った今、私は毎日床を拭き、ゴミを溜めない生活を続けています。あのゴミの山は、私の心の悲鳴だったのだと思います。もう二度と、自分自身をあの暗いゴミの中に閉じ込めるようなことはしません。
マンション退去を迫られた私のゴミ屋敷脱出記