私は、ゴミ屋敷の清掃業者として、数多くの現場を経験してきました。テレビやメディアで見るゴミ屋敷の光景は、そのほんの一部に過ぎず、実際に現場で目にする現実は、想像を絶するほど多様で、そして深い問題を抱えています。ここでは、清掃業者の視点から見たゴミ屋敷のリアルと、依頼主の複雑な心情についてお話ししたいと思います。現場に足を踏み入れた瞬間、まず圧倒されるのは、その「ゴミの量」と「悪臭」です。天井近くまで積み上がったゴミの山、腐敗した生ゴミや排泄物から発生する強烈な臭いは、経験豊富な私たちでさえ身構えるほどです。害虫(ゴキブリ、ネズミ、ウジなど)の大量発生も日常茶飯事で、感染症のリスクに常に配慮しながら作業を進めます。しかし、私たちの仕事は、単にゴミを片付けるだけではありません。ゴミの山の中から、依頼主にとっての「大切な物」を探し出すことも重要な業務です。アルバム、通帳、印鑑、現金、故人の遺品など、ゴミの中に埋もれたそれらは、依頼主にとってかけがえのない価値を持つものばかりです。細心の注意を払いながら分別し、見つけ出した時には、依頼主から心からの感謝の言葉をいただけます。この瞬間こそが、この仕事の最大のやりがいを感じる時です。依頼主の心情もまた、様々です。恥ずかしさや罪悪感、諦め、そして「もうどうにもならない」という絶望感を抱えている方がほとんどです。しかし、部屋がきれいになっていくにつれて、彼らの表情が少しずつ明るくなり、最後に「本当にありがとう」と涙ながらに感謝の言葉を伝えてくれた時、私たちはこの仕事の意義を深く感じます。ゴミ屋敷清掃は、肉体的にも精神的にも過酷な仕事ですが、依頼主の人生が新たな一歩を踏み出す瞬間に立ち会える、非常に社会貢献性の高い仕事だと私は思っています。この仕事を通じて、私は人の孤独や困窮、そして回復への希望を目の当たりにしてきました。
ゴミ屋敷清掃業者の視点から、現場のリアルと依頼主の心情